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照明のあゆみ(5)

ガス灯-その1

18世紀前後には石炭を乾留するとガスが発生し、それを火に近づけると燃えることがすでに知られていました。今の都市ガスではないので、とても静かな燃え方でしたが、それでも照明にするには十分過ぎる光の量でした。

ただ、このときにすぐ新しい照明としてガス灯の設備が開発されたわけではなく、実に100年近く、いわゆる「見世物」「娯楽目的」としてのみ、このガスは利用されたようです。

それが1800年頃に急に新種の照明として開発されたのは、例の「産業革命」との関係があります。前にも述べたように、手工業の時代には日光の不足する時間帯にロウソクや灯油ランプで補助をしたものですが、それが工場労働に移行し、そのための照明となると、恐ろしい量の燃料が必要になりました。そこで、人々はこれら施設の照明にはガス灯がもってこいだということに、突如気がついたのでした。

この照明用ガスには石炭ガスと木材ガスが使われました。石炭の豊富でないフランスなどでは木材を利用したが、イギリスではその頃石炭は無尽蔵と考えられていました。イギリスが産業革命で世界の先頭ランナーになった理由の一つはその豊富な石炭にあるのですが、このガス灯の分野でもおかげで世界のトップを走ることになったのです。

さらに言えば、石炭ガスの製造には特別な技術は必要ありませんでした。すでに開始されていた石炭からコークスを作る工程の副産物、としてガスが取り出されるため、なんら特別な技術や設備は不要だったのです。

むしろ厄介だったのはガスの運び方でした。

フランスなどでは、大きな袋にガスをつめ、それを持ち運ぶという手法をとろうとしました。家庭のなかで使用し、暖房の役目も担わせることとなったために「熱ランプ」と呼ばれましたが、結果として広く利用されるまでには至らなかったようです。イギリスと比べて新しい産業もまだそんなに興っておらず時代の要求度がまだ低かったせいもあると思われます。

イギリスではとにかく産業用にガス灯の実現が急務でした。まずは「管」が開発されました。「貯蔵タンク」や「バルブ」も開発され、1805年にはマンチェスターの紡績工場に取り付けられたと記録されています。1814年に1社だったガス会社は1822年には4社になりました。ガスタンクの容量は1.5万立方フィートから100万立方フィートに急拡大しています。イギリスの田舎のほうまでどんどんガス製造工場ができていきました。

もっとも、早かったのはイギリスだけで、フランスが約30年、ドイツは約40年遅れてガスの時代に入っていきました。また、ガスとはいってももとは石炭なのですから、埋蔵量が多かったイギリスから一部輸入をしながらガスを生産しなければならなかったようです。



そして世界中の照明がとうとうガス灯に切り替わったかと思いきや、実はそうはいかなかったのです。

その面白いいきさつは次項にて。
by concordia-light | 2008-02-26 13:17 | 照明と灯かりの歩み
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